玉縄城は玉縄の城。鎌倉・大船・玉縄、玉縄歴史の会。

令和6年(2024年)6月公開講座『鎌倉時代の女性~北条政子・本覚尼(源実朝の妻)を中心に~』のレポートを掲載

 令和6年(2024年)6月2日(日)、『鎌倉歴史文化交流館・山本みなみ先生』にお越しいただき、『鎌倉時代の女性~北条政子・本覚尼(源実朝の妻)を中心に~』についてご講演いただきました。今年は、北条政子没後800年、本覚尼没後750年という節目になります。

ポイント

北条政子について

1163年に伊豆国田方郡で誕生。父は北条時政、母は伊東祐親の娘。6歳下の弟に義時がいる。平治の乱で敗れた源義朝の三男・頼朝が平家に捕らえられ、伊豆国に配流されてきたことが頼朝と政子を親密に、そして夫婦となるきっかけになった。

源頼朝が鎌倉に幕府を開くと、政子は鎌倉殿の妻としての活動を活発に行った。頼朝と共に鶴岡八幡宮などの寺社に参詣し、鎌倉の安泰を祈願。また、源義経の愛妾・静や木曽義仲の妹・宮菊など、親族の女性たちを援助。頼朝との間には2男2女の子供を儲けた。


頼朝と2人の娘が死去。政子は43歳にして出家し、頼朝の後家・尼御台所となる。次の鎌倉殿には長男・頼家が就任するものの、13人の有力御家人が頼家を支える体制 『鎌倉殿の13人』が成立。北条氏から時政と義時の2名が選ばれていることからも、人選は政子だったと考えられる


頼家が重病で危篤に陥ると、北条氏と比企氏の間で次の鎌倉殿を巡る争いが発生。政子の命により義時らが比企一族を攻め滅ぼした。北条氏は実朝を擁立し、時政が執権に。快復した頼家は修善寺に幽閉され、義時の手下により殺害。平賀朝雅の擁立事件後、父・時政は追放され、政子と義時が幕府を主導することになった。


1219年正月、実朝は鶴岡八幡宮の右大臣拝賀の場で甥の公暁により暗殺され(黒幕は義時か?)、その後に皇族将軍は実現せず、2歳の三寅(藤原頼経)が下向し、尼将軍政子が誕生した。幕府の代表者(4代将軍)は政子となり、従三位、次いで従二位に叙される(頼朝や実朝と同等の位階)

承久の乱における政子の演説は、『吾妻鏡』では政子は御簾の奥に控え、安達景盛が代読。『承久記』では、心痛多き自身の生涯を強調し、情に訴えた上で頼朝の恩を説いたとなっている。なお、義時や大江広元らによる軍議の最終判断は政子であり、戦後処理や恩賞・処罰の程度も政子の判断とされる。

晩年の政子は、夫や子どもたちの菩提供養と尼将軍としての政治に専念。
・高野山に金剛三昧院を建立し、実朝の菩提を供養。
・義時死去後に法華堂(墓所)を頼朝の墓に並べて建立(武家政権の創設者としての地位を政子が差配)
・伊賀氏事件(義時の後継者争い)では、政子が三浦義村を説得して伊賀一族を処罰。泰時政権への道を拓く。


1225年7月11日、政子死去(享年69)。頼朝の後家としての政子の存在は、実朝の暗殺(源氏将軍断絶)や承久の乱という鎌倉幕府最大の危機を乗り越える上で極めて重要だった。政子の尽力により、幕府の一貫性が保たれ、権力の交代による混乱が回避された。

本覚尼について

建久4年(1193年)、坊門信清の娘として誕生。坊門家は刀伊の入寇で活躍した藤原隆家の流れを汲む。

11歳の時に関東へ下向し、実朝の御台所(正妻)に。後鳥羽院の母の兄弟にあたる坊門信清の娘であり、後鳥羽天皇と実朝は義兄弟の関係となった(公武融和の時代を迎える)

鎌倉での日々は寺社参詣が中心で、将軍・実朝の祭祀権(将軍権力の1つ。幕府の公的な祭祀を主宰する権限)を御台所の立場から支えた。実朝暗殺事件後は『本覚尼』として出家し、活動の舞台を京都へ移した。

実朝の後家として、京都西八条の実朝所有の邸宅敷地に居住。貴族女性の離婚・再婚は一般的だが、本覚尼は実朝の菩提供養を選択。これは実朝との夫婦仲が良好だったことが想像できる。

その後の本覚尼は、実朝の菩提を弔い、京と鎌倉の融和を図りつつ、1274年に82歳で死去。実朝の暗殺や承久の乱を乗り越え、幕府の一貫性を保ち、公武融和に尽力。50余年の人生を夫の菩提供養に捧げ、幕府の安泰を祈り続けた

講演後記

 鎌倉幕府成立から安定期(3代執権・泰時の頃)に至るうえで、政子の存在が如何に大きかったか、山本先生に改めて教えていただいた気がする。(やはり、政子のイメージは小学生の頃に観た『草燃える』で岩下志麻さんが演じた北条政子!)
 一方の本覚尼は、実朝の妻としてドラマや小説に登場するものの、山本先生が仰っていたように実名が不明なほどあまり知られていない人物だが、このような機会に取り上げていただけたことは幸いだった。(欲を言えば、本覚尼の方にもう少し時間を割いていただけると嬉しかったです)
 鎌倉時代の女性にスポットを当て、且つ北条政子没後800年、本覚尼没後750年という節目での講演は、山本先生ならではの企画(お考え・視点)だと感じ、これからもこだわりのあるご講演をお願いします。


女性ならではの視点で講演される山本先生
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次